2006年03月22日
川俣晶の縁側過去形 本の虫感想編 total 2760 count

ワンピース 1~2 尾田栄一郎 集英社

Written By: 川俣 晶連絡先

 全部読む気はないにしても、ちらっと見てみたいと思って買ったワンピース単行本。

 まだ方向性が定まっていない感じのある1巻と違って、2巻の盛り上がりは面白いですね。

 しかし、本当に驚いたのは2巻の各話の扉絵だけで酔えること。

 扉絵がそれ単体で1つの世界を作り、それを見て酔える作品は好きです。

 個人的に、最もその条件に該当するのは突撃!パッパラ隊ですが、魔法先生ネギま!なんかも、そういう面があって良いですね。

 しかし、ワンピースもそうだったとは全く気付いていませんでした。アニメだけ見ていると、そういう部分は見えないわけですから、やむを得ないですね。

 まず、全体の扉となる絵は、ルフィ、ナミ、ゾロが酒場から出てくるところですが、ぐっと足が前に出ている構図がいい! 更に、この3人はバラバラの方向に視線を向けています。それにも関わらず、3人は同じ方向に向かって歩く信頼し合ったチームだという雰囲気が描かれています。実に素晴らしい!

 第10話の扉絵はナミの靴の底が大きく描かれています。横には豚。これほど大胆な構成で、スカッと爽快に前に進むムードを出しているのは見事!

 第12話の扉絵は、ルフィ、ゾロ、ナミの3人の全身と顔の計6点の絵が並んでいますが、顔が全身の下に配置されるというびっくりするような構成。しかも、強いパースが付いた立体感の強いポーズです。作者は、頭の中で絵を平面ではなく立体として把握しているのだと思います。それは、日本では希有な才能であり、ダイナミックな構図を描き出すための有益なセンスだと思います。

 第13話、亀をつり上げるルフィと、座って見ているナミ。一見不自然な絵ですが、実は亀も仲間のような存在であって、じゃれ合っているような感じでしょうか? 実は本編と違う世界観が扉絵にはあります。

 第14話、吸血鬼風ルフィ。これも、本編とは違う世界観です。でも、凄く格好良くて気持ちよさそう。

 第15話、これも一見して分かりにくい絵ですが、マンモスの群れが歩いているところで、ルフィ、ナミ、ゾロが便乗しているという感じでしょうか。背中の最も高いところに座っているナミ、弓なりの牙の上で寝ているゾロ、長い鼻の抱きついて遊んでいるルフィという各人の描写が生き生きとしていて良いですね。そして、彼らを乗せたまま悠然と歩くマンモスも。

 第16話、今度はうってかわってバギー海賊団のバギー、副長、参謀の3名。しかし、この絵も格好良い! 更にキャラクター性も上手く描かれています。

 第17話。最後にして最高の扉絵。たった1枚の絵に、複数のドラマが凝縮されている感じです。ペンギンとルフィ達という構図ですが、ペンギンと手をタッチしているルフィ、魚を捧げられて戸惑っているナミ、そして背後に刀をびしっと持った3匹のペンギンを立たせたゾロ。3人が3人とも別々のドラマを演じつつ、1枚の絵として完成されています。しかも、このペンギン達は少なくともこの時点で本編に登場していませんが、この絵の1枚だけで立派なキャラクターとして独り立ちしています。あまりに素晴らしくて、何回見ても飽きない扉絵ですね。

 実に素晴らしい!